鯉川商店街にある美谷時計店には、「アリバイ崩し承ります」という一風変わった張り紙がある。店主の美谷時乃が、成功報酬一回5000円で依頼者の話を聞いてアリバイを崩してくれるのだ。「何時何分にどこそこにいた」というアリバイには時計が深く関わっているので、アリバイ崩しを仕事として引き受けているのだという。以前は時計店の先代である時乃の祖父がアリバイ崩しをしていたが、祖父が亡くなってからは、時乃がその仕事を引き継いでいた。
4月から県警捜査一課に配属された新米刑事の僕は、守秘義務違反を反省しつつも、今日も時乃に実際に起きた事件のアリバイ崩しを頼んでしまう。