巨匠・黒澤明監督による、監督が見た幻想的な“夢”の世界を、8つのエピソードで綴るオムニバス形式のファンタジー。「日照り雨」、「桃畑」、「雪あらし」、「トンネル」、「鴉」、「赤富士」、「鬼哭」、「水車のある村」の8話。
「日照り雨」ある日、五歳位の“私”は母に見てはいけないと言われていた狐の嫁入りを見てしまう。家に帰ると母が恐い顔をして立っていた。狐が来て怒っていた、腹を切って謝れと言ってたという。一生懸命、死ぬ気になって謝って来なさいと母は言った。“私”は白鞘の短刀を持って、虹の下の狐の家に行くのだった。「桃畑」桃の節句の日、少年時代の“私”は不思議な少女(桃の精)を見る。少女を追って裏の桃の段々畑に出ると、人間と同じ雛人形が集まっていた。雛人形たちは桃の木を切り倒した“私”の家には行かないと言った。だが、ひとりの女雛が桃の木が切られるときに“私”は泣いてくれたということで、大勢の雛人形が舞を舞って、桃の花盛りを見せてくれた。しかし、気付くとそこには桃の木の切り株だけが残っていた。